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BRIGHT NEWS vol.163 クイックリプライ「カスハラ顧客になんて言えばいいの?」カスハラ防止条例に基づいた具体的な言い回しとは

TOPICS

(1)実際にカスハラが疑われるクレームが生じた時の具体的な対応策



今回は、お客様対応において「東京都カスハラ防止条例」がどのように影響してくるかをまとめ、同条例を活用した「具体的な言い回し」を提案していきます。


まずはじめに、誠に残念なことですが、ブライダル事業者の皆さんがどんなに「誠実」に、また「全力」で新郎新婦等のお客様と向き合ったとしても、時にクレームは発生してしまいます。

以下、「現場で何らかのクレームが生じた」場面を想定して解説していきます。


カスハラ検討ポイント1 お客様による「クレームの伝え方」


「東京都カスハラ防止条例」(付随するガイドラインも含みます。)においては、仮にクレームの内容が正当であったとしても、その伝え方が「社会通念上不当」である場合にはカスハラと認定されうるとし、不当な例としては下記のような事項が示されています。


・身体的な攻撃

・威圧的な言動

・土下座の強要

・スタッフ個人への嫌がらせ 等々


クレームにこうした上記の項目が伴った場合においては、いくら事業者に非があり、お客様の言い分に理があったとしても、同条例は「スタッフを守る」ことを事業者に義務付けています。

そして具体的には、下記のような言い回しでスタッフを守ることが考えられます。


【仮にお客様がスタッフに対して威圧的な言動を繰り返した場合の言い回し例】


「このたび当社のミスで多大なるご迷惑をおかけしていることは深くお詫びいたします。しかし、いくら当社に非があるとしても、当社スタッフに対するお客様のそのような言動は、『東京都カスハラ防止条例』及びそのガイドラインに照らして大いに問題があると判断せざるを得ず、看過できません。」


「今後このような言動を繰り返さないとお約束いただけるのであれば、当社としては引き続き誠実に解決策を検討し、解決に向けて努力してまいりますが、お約束いただけない場合やこのような言動が繰り返された場合には、同条例に基づいて対応は打ち切り、法的な対応に移行させていただきます。


カスハラ検討ポイント2 「要求の内容が過剰であった場合」


続いては、「クレームの伝え方」には問題がないものの「要求の内容が過剰」な場合です。

クレームに直面した皆さんは自らの不手際についてお詫びをしつつ、悩みに悩んで返金等の「ご提案」を考えることになります。

そして、この「ご提案」についてご納得をいただければよいのですが、「これでは足りない」「誠意が見えない」等とご納得をいただけず、「〇〇の返金以外は受け入れない」等と過剰(と事業者としては考える)な要求がなされる場合もあり得ます。


「東京都カスハラ防止条例」においては、仮に事業者側に非があったとしても、過剰な要求を繰り返すような場合にはカスハラと認定されうるとしています。


では、お客様の要求が「過剰か否か」はどうやって判断するかですが、ここで大いに役立つのが「法律に照らすとどの程度の返金や賠償が妥当なのか」という視点です。


過去のメルマガ等で再三「妥当な返金額の法律的な考え方」について解説していますので詳細の説明は割愛しますが、そもそも法律には「予め国が示す”もめ事”が生じた際の解決策」という側面がありますから、事業者としては「法的にどうなの?」という視点から返金等の「ご提案」の方向性を定め(当然ながら「お詫びのみで返金はしない」というゼロ回答もあり得ます。)、それにビジネスジャッジを加味して、最終的な「ご提案」をまとめていくことが望まれます。


この点、返金等の「ご提案」を検討するに際して、「この返金額ではお客様は納得されないのではないか」等とお客様の心中を推測して、「お客様の納得」にゴールを置いて「ご提案」内容を検討しておられる事業者さんも少なくありません。


お気持ちはよく分かるのですが、筆者としては、「お客様にご納得いただけるか?」という視点で検討するのではなく、あくまで法律を軸にして「仮に裁判所等の第三者が客観的に提案内容を目にした際に「これは合理的な提案だ」と評価してもらえるか?」という視点で検討すべきだと考えます。


その理由は3点あります。


まず、「納得するかしないか」他人の心はコントロールできないという点があります。どんなに皆さんが誠実に心を尽くして謝罪し、提案をまとめたとしても、それを納得するかどうかは相手の心持次第ですので、お客様の納得という軸で解決策を検討しても、いつまで経っても終息しない場合が充分にありえます。


次に、お客様の納得を軸に置くと同じミス案件でも提案内容が変わってしまいかねないという点です。仮に同じミスを2組の新郎新婦に対してしてしまった場合、もし相手の納得感によって対応を変えるとすると、強硬に苦情を申入れなかなか納得していただけない新郎新婦には手厚い提案となり、逆にぐっと堪えて許して下さった(本来ならばより感謝しなければならない)新郎新婦への提案が軽いものになってしまうという本末転倒な結論になりかねません。


最後に、先に述べたとおり、そもそも法律自体が「予め国が示す”もめ事”が生じた際の解決策」という側面があるという点です。クレームの解決に向けて法律を検討の要素に加えることは、誰にも文句を言われる筋合いのものではありません。


したがって、事業者としては、クレームに対する解決策を検討する上では、法律を軸に「第三者に合理的な内容だと理解してもらえるか?」という視点から「ご提案」をまとめるべきと考えますし、それをお客様に提示した後は、仮に納得していただけなくてもブレないことが大事であろうと考えます。


唯一「ご提案」の内容の是非を判断できるのは(終局的には)裁判所だけ、というのが日本の法律のルールですから、少なくとも「お客様が納得しないから」という理由で「ご提案」の内容をコロコロ変更することは、結果的にクレームの着地点を誤らせるおそれがあると考えます。


もちろん、皆さんが誠実に「ご提案」の内容を説明し続けても、いつまでもお客様にご納得をいただけない場合はあり得ます。そのようなやりとりが長期化した場合には、「東京都カスハラ防止条例」に照らして以下のような言い回しが考えられます。


【仮にお客様が過剰な要求を繰り返し、現場に悪影響が生じている場合の言い回し例】


「このたび当社のミスで多大なるご迷惑をおかけしていることは深くお詫びいたします。しかし、当社は法律の専門家の助言も得た上で、すでに具体的な解決策をご提案済みでございます。当社としては、この解決策は、本件の事情を充分に勘案し、お客様に対するお詫びの気持ちも含めた最大限のご提案であり、これ以上のご提案はいたしかねます。」


「当社はすでにこの点を再三お伝えしておりますが、残念ながらお客様からは何度も「これでは足りない」「もっと誠意を見せて欲しい」等のご指摘を頂戴し、協議が長期化しております。大変恐縮ですが、当社としてはこれ以上ご提案の内容について協議する意思はありませんので、今後もこうしたご指摘が続くようであれば、「東京都カスハラ防止条例」等関連法令に基づき、協議の打ち切り等の対応を検討せざるを得ないことを予めご了承ください。」


「なにとぞご了承を賜り、当社からのご提案内容をもってご容赦を賜り、本件の解決に合意をいただきたくお願い申し上げます。」


いかがでしたでしょうか?


前回までのメルマガでも解説した通り、「東京都カスハラ防止条例」では、各事業者に対してカスハラに直面するスタッフを守る義務を課しています(今国会で成立予定の法改正により、全国の事業者には法律で同様の義務が課せられる見通しです。)。


したがって、暴力的・威圧的な方法によるクレームや、すでに解決策を提示した後も延々と続くクレームに直面した場合には、上記の通り「東京都カスハラ防止条例」をうまく活用して、現場スタッフを守っていくことが必要となります。


※「東京都カスハラ防止条例」やそれに関連する「ガイドライン」については、

 『東京都TOKYOはたらくネット』(下記URL)よりご確認いただけます。


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