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BRIGHT NEWS vol.162 【4/1施行】「東京都カスハラ防止条例」を正しく知ろう<後編>

更新日:9 時間前

TOPICS

(1)「東京都カスハラ防止条例」を正しく知ろう<後編>



「東京都カスハラ防止条例」は令和7年(2025年)4月1日より施行されます。


ブライダル事業にもとても大きな影響が及ぶ内容となっており、前回に引き続き、条例の本文と条例に付随して東京都から発表されたマニュアルをもとに、この条例の内容を解説していきます。


※「東京都カスハラ防止条例」やそれに関連する「ガイドライン」については、

 『東京都TOKYOはたらくネット』(下記URL)よりご確認いただけます。

※1~3については「BRIGHT NEWS vol.161」をご確認下さい。



4.カスハラの判断基準とは?


「カスハラ防止条例」に婚礼現場で対応していくために実務的に最も大切なポイントは「カスハラか否かの判断基準」といえます。その点について「東京都カスハラ防止条例」がどのような基準を示しているのかを見ていきましょう。

まず、「東京都カスハラ防止条例」は第2条第5号でカスハラについてこう定義づけています。


『顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものをいう。』


これをさらに深掘りしていきましょう。

まずは「著しい迷惑行為」とはなにか、です。

条例に伴う「ガイドライン」では下記のような種別に整理されています。


1)暴行・脅迫その他の違法な行為

2)正当な理由がない過度な要求(=要求内容の妥当性がないもの)

3)暴言その他の不当な行為(=行為の手段・態様が不相当であるもの)


そして、対象となる行為が「著しい迷惑行為」に該当するか否かについては「当該行為(注:カスハラが疑われる行為)の目的、当該行為を受けた就業者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該行為が行われた経緯や状況、就業者の業種・業態、業務の内容・性質、当該行為の態様・頻度・継続性、就業者の属性や心身の状況、行為者との関係性など、様々な要素」を総合的に考慮して判断するとされています。


これを婚礼現場に当てはめると、仮にカスハラが疑われる「お客様の問題行動」があった場合には、その背景にある事業者側の落ち度の度合い、生じた損害の内容または規模、スタッフ側の態度等を踏まえて総合的に判断することになると考えられます。


次に、「就業環境を害する」の判断基準です。


この点「ガイドライン」は「顧客等による著しい迷惑行為により、人格又は尊厳を侵害されるなど、就業者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったため、就業者が業務を遂行する上で看過できない程度の支障が生じること」としています。


また、(ここがなかなか興味深いところなのですが)その判断は「平均的な就業者が同様の状況にあった時にどう感じるか」を基準とするため、仮に通常よりも「打たれ弱い」スタッフがお客様の言動によって傷ついたからといって直ちにカスハラに該当するわけではない一方で、たまたま「タフな性格」の(メンタルが強い)スタッフがいて、どれだけ罵詈雑言を浴びても全く意に介していないという状況があったとしても、その言動が平均的なスタッフが対象なら「当然傷つくよね」と言えるほどの水準ならば、カスハラに該当しうることになります。加えて、就業者個人に向けたものではなく企業向けの誹謗中傷行為(例「お前の会社は全然だめだ」等と企業を攻撃する言動)であっても対象となりうる、とされています。


これを婚礼現場に当てはめると、たとえば窓口をクレーム対応のキャリア豊富な支配人やマネージャーが務めていたため罵詈雑言を浴びても(メンタルが強い、あるいはクレーム対応に慣れている)本人はさほど気にしていなかったとしても、客観的に「それは行き過ぎでしょ」と思える程度の言動が認められれば、それを理由にカスハラ認定できる場合(つまりたまたま本人の精神的ダメージが少なくてもカスハラと認定してよいとき)がある、ということです。


以上を踏まえつつ、条例に伴う「ガイドライン」では具体的なカスハラ行為またはカスハラになり得る行為を列挙しておりますので、ご関心のある方は上記のURLよりご確認いただきたいですし、来月17日に開催するセミナーではブライダルの事例に置き換えて詳細を解説しますので、是非ご受講をご検討ください。



5.事業者が負う義務とは?


この条例は、単に事業者や就業者をカスハラから守るのみならず、就業者を雇用などしている事業者にも義務を課しています


第9条では、事業者には以下の3つの義務が課せられる旨が明記されています。


(1)カスハラ対策に主体的かつ積極的に取り組み取り組む義務(第1項)


これは逆に言えば「受動的または消極的であってはならない」ということですね。


(2)カスハラと対面した就業者の「安全を確保」し、カスハラ顧客等に対して「中止の申入れ」その他必要かつ適切な措置を講ずる義務(第2項)


ここは特に注意です。

簡単に言えば、カスハラ事案が発生したのに「カスハラへの対応を担当者にだけ任せきりにしていた場合」には事業者の義務違反が問われることになる、ということです。


そして具体的な「措置」としては、退去要請、出入り禁止、取引停止等が例示されています。


ここをもう少し掘り下げると、そもそも事業者は労働契約法により労働者に対する安全配慮義務を負っていて、就業者の安全が脅かされる事態が発生した場合には適切な対応を講じ、就業者の安全確保に配慮することは義務があります。それなのにカスハラ事案が発生した場合に、担当の就業者のみに対応を丸投げするような姿勢は、この義務に反するリスクが生じるということです。


ブライダル業界は他の業界と比べて「お客様に寄り添う」姿勢がとても強く、その姿勢はある面で私たちの強みではあるのですが、仮に今後もカスハラ案件において旧態依然の対応を継続した場合には、事業者の安全配慮義務違反の責任が問われかねない時代になりました。


(3)就業者自身が顧客等の立場としてカスハラをしないよう必要な措置を講ずるよう努める義務(第3項)


これも意外に忘れがちな視点ですね。


就業者も立場が変わればカスハラの「加害者」になり得ることから、事業者から就業者に対してカスハラについての啓発や教育等を行っていくことが求められています。



6.事業者はどう備えるべきか?


以上、ご説明してきた通り、「東京都カスハラ防止条例」はかなり明確に対象者を特定し、カスハラを定義し、事業者に具体的な対策を求める内容となっています。


今後事業者に求められる対応としては、まず第1歩目として「条例の内容を正しく把握すること」が重要です。


繰り返しとなりますが是非BRIGHTのセミナーをご活用ください(セミナーでは、条例の解説だけでなくカスハラ発生時のトークと対応法も伝授させていただきます。)。 


次に「社内ルールを作ること」です。


カスハラが疑われる案件が発生したとき、誰がカスハラか否かを判断するのか、カスハラと認定されたらどのような対応をするのか、担当スタッフをどう守るのか、ということについて、現場の実態に即して各事業者でルール化していくことが望ましいと考えます。


そして最後に「方針を開示すること」です。


自社はカスハラについてどう向き合い、どう対応していくのかについて、社内はもちろん、社外に対しても開示することがガイドラインでも求められています。


いかがでしたでしょうか?

現場でのクレーム対応に劇的な変化を及ぼすことになる「東京都カスハラ防止条例」について、2回にわたってその概要を解説してきました。

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