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BRIGHT NEWS vol.160 またも「下請法違反」で勧告処分!業界内取引の健全化が急務です!

更新日:3月25日

TOPICS

(1) ブライダル企業が『下請法』違反で再びの勧告処分


この「BRIGHT NEWS」でも再三再四お伝えしてきたように、今政府は本気で「下請けいじめ撲滅」に向けて舵を切っていて、昨年11月には主にフリーランスへの不公正な扱いを禁じる「フリーランス保護法」が施行され、また今国会では「下請法」を改正し、さらに事業者間の業務の受発注関係をより強力に健全化させようとする動きが予定されています。


そんな中、誠に残念ながらブライダル業界において『下請法』違反の勧告処分が出されたことが、令和7年3月6日付で公正取引委員会から発表されました。

なお対象企業は、過去に同じ内容で勧告処分を受けており、2回目の処分となります。


公正取引委員会が発表した事案の概要は、

婚礼施設を運営する事業者が、取引先である司会、美容または映像制作等のパートナー事業者に対しておせち料理やディナーショーチケットを販売しようとした際に、

◆ スタッフや施設ごとに「販売目標」を定めていた。

◆ 「発注担当者」からパートナー事業者へ直接購入を要請していた。

◆ 購入を断ったパートナーへ「再度」購入を要請していた。

等の事実が認められた、というものです。

そしてこれらの行為が下請法で禁じられた「購入・利用強制の禁止」に抵触すると判断されました。


下請法で禁じられた「購入・利用強制の禁止」とは、ブライダル業界に当てはめて説明すると、ホテルや式場を運営する「会場」事業者が、司会者やヘアメイク等の「パートナー」事業者に対して、自社商品やサービス等を強制的に販売することを禁じた規制です。


そして公正取引委員会が示す「下請法運用基準」によれば、以下のような行為を購入・利用の「強制に該当する恐れがある」として例示しています。以下、ブライダル業界に置き換えて列挙します。


ア. 会場とパートナーとの取引に影響をもつ会場担当者から購入又は利用を要請すること。

 例)支配人が取引先のヘアメイク事業者に直接「うちの●●を買って」と要請する行為

イ. パートナーごとに目標額又は目標量を定めて購入又は利用を要請すること。

 例)会場側が「あの会社には●個買ってもらおう」と一方的に目標を決める行為

ウ. パートナーに対して「要請に応じないと不利益な取扱いをするぞ」と示唆すること。

 例)要請の際に「来年からの取引もあるからね。分かるよね?」等と申し添える行為

エ. パートナーが一旦断ったにもかかわらず、再度要請すること。

 例)すでに断ったパートナーに「改めてのお願いなのだけど」と再度要請する行為

オ. パートナーから申出がないのに、一方的に商品等を送付すること。

 例)発注してないのに「今年おせち●個送ります」と通知し、送付する行為


つまり、支配人などパートナーを選択できる決裁権のある者が直接要請したり、一旦断られた後に「そういわずにお願いしますよ」と再度要請したりするだけでも「購入・利用強制の禁止」に抵触し得るということです。


そしてさらにひとつの事実をお伝えしておくと、公正取引委員会は「下請法運用基準」の中で具体的な摘発事例として以下のような事例を挙げていました。

『冠婚葬祭式の施行に係る司会進行,美容着付け,音響操作等の実施を委託している下請事業者に対して,委託内容と直接関係ないにもかかわらず,支配人又は発注担当者から,おせち料理,ディナーショーチケット等の物品の購入を要請し,あらかじめ従業員又は冠婚葬祭式場等ごとに定めていた販売目標数量に達していない場合には再度要請するなどして,購入させた』

そう、まさに今回の勧告事例そのものが違反例としてすでに例示されていたのです。


この公正取引委員会の示す基準に対しては、もしかしたら会場側のお立場の方からすれば「厳し過ぎるよ」「パートナーさんにはいつも仕事を発注しているのだから、ちょっと強めに協力を依頼するぐらいいいじゃないか」という感想をお持ちの方もおられるかもしれません。

その気持ちも、正直なところ少しは分からなくもありません。


ただ、今一度整理しましょう。

これは「法律」なのです。そして監督官庁である公正取引委員会が示した「公式基準」なのです。

これに従わないという選択肢は、日本という法治国家でビジネスを展開する立場にある私たちには「ない」のです。


今国会では、そもそも「下請け」という名称から無くして(ブライダル業界でいうところの)「会場」と「パートナー」との垣根をなくすというところまで踏み込んだ「下請法」改正案が提出される見込みとなっています(なお「下請け事業者」に代わる名称として新たに「中小受託事業者」という名称が予定されています。)。

また、報道によれば公正取引委員会等は下請けいじめが発生するリスクの高い「要注意業界」をいくつか特定して、集中的に是正を求めていく方針とのことです。今回の勧告処分は、確実にブライダル業界に対する印象を悪くしたはずです。


また、政府による規制云々以前に、そもそも私たちの提供する結婚式というサービス自体が「会場」と「パートナー」がうまくスクラムを組んでこそ提供できる性質のものであることは今更言うまでもないわけで、発注する側とされる側という立場の違いこそあれど、本来は「会場」と「パートナー」との間に上下関係はないはずです。それにも関わらずもし業界全体が旧態依然とした取引関係を放置していれば、今後、優秀で意欲のあるパートナー事業者ほど、もっと自分たちを大事にしてくれる別の業界に流れていってしまうであろうことは容易に想像できるはずです。


私ごときがこのような訴えをするのは僭越の極みではありますが、このニュースを「ブライダル業界内の取引関係の健全化」について今一度認識を新たにする機会にしたいと切に願っていますし、微力ながらBRIGHTとしては健全化に向けた取り組みに貢献できるよう、これからも努力したいと思っています。


※「下請法」が適用されるのはその種類や当事者の資本金等の要件が満たされた取引に限られ、あらゆる取引に適用されるわけではありません。

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